それは突然やってきた

先月末、実家に向かう途中に携帯を見ると以前お世話になったことのある病院から着信あり。

あれ?もう何年も行ってないのに何かな?

いや、もしかして?
と母の携帯に電話してみると、知らない人の声。

「◯◯病院です。お母さんが倒れてこちらの病院に救急搬送されました。脳に出血があるようです。」

おお〜!ついに来たか〜!
こういう展開ってほんまに突然やってくるねんな。
いつもの生活の中にポコンと出現する。


ICUに入ると機能満載のベッドの上で苦しそうに顔を歪める母。とにかく気分が悪くて吐き気が止まらない様子。

ベッドのかたわらで脳外科の先生がモニターにいろいろ映し出しながら説明してくださった。

出血しているのは小脳。
小脳が腫れて近くにある脳幹が圧迫されると死に至る。
脳脊髄液が詰まって流れなくなると水頭症になるので緊急手術になるかも。

というわけで水頭症を回避する手術の同意書に署名する。
手術内容は、おでこの上あたりから管をブスッと差し込んで脳室内にたまった脳脊髄液を排出するというもの。
脳外科の先生ってすごい。

手術の危険性などの説明も受けた。

「万が一の場合、延命を希望しますか?」

おおー!そんな危機的状況なのかー!
外傷がないから苦しそうな顔して寝ているだけに見えるのに。

「手術をすることになったら連絡します。きょうあすが山です。」

あまりの現実味のなさにポカンとしたまま控え室に戻る。


さっきあわただしくICUに入って行った女性が嗚咽を漏らしながら控え室に戻って来た。
先に到着していたおそらくご主人の会社の方?に「手術をしても助かる見込みはないそうなので手術はしないことにしました」と震える声で伝えていた。

わたしは何でこんなに冷静なんだろー?
自分でも驚くほど冷静沈着なのだ。


もともと実家に行って泊まる日だったので実家に行く。

なにもかもそのままの実家をながめる。

コンロの上に人参を山盛り炊いた鍋があった。
きょうの晩ごはんはこれやったんかー。

すっかり遅くなった晩ごはんを食べて、早めに布団に入ったけどぜんぜん眠れなかった。


翌日、朝から看護師さんに指示された入院に必要なものを買いに行く。

基本的に必要なものはレンタルできるんだけど、オムツ以外は申し込まなかったのだ。

綿100がいいとか言うに決まっているのだ。

ICUでジュースが飲みたいと訴えていた母。

りんごジュースが飲みたい〜
100パーセントのやつ〜
ストレートのりんごジュース〜
濃縮還元じゃないやつ〜

生死のはざまにありながら濃縮還元でなくストレートを指定してくるところが間違いなく我が母だと確信した。

もちろんICUに入ったばかりでジュースなぞ飲ませてもらえるわけがなかった。


できるだけ快適な素材や安心安全なものを探していたら病院に着くのが13時を過ぎてしまった。

受付に行くと、
「13時30分に一般病棟に移りますので一緒に行きましょう。」とのこと。

あれ?
もう大丈夫な感じ?山越えた?

相部屋を希望したけど、いまは空いてないのでとりあえず個室に入ることになる。(個室料金は不要でラッキー)

母の顔はまん丸にむくんで目がちっちゃくちっちゃくなっていた。

面会時間は1回30分。
一瞬で過ぎてゆく。

いますぐどうにかなることはなさそうなので一旦京都に帰ることにする。
あしたは朝一からご予約をいただいているのだ。

もしもの時はお客様にご連絡しないと、と考えていたけど、すでにご予約いただいている日は予定通りサロン営業できそうで一安心。


上の文章が入院2日目までのお話です。
きょうは入院12日目、だいぶ落ち着いてきました。

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